SAFE HOUSE、またね
私はいま、ひどい喪失感からベッドに手足を投げ出している。
さっきまではそこにあった人の温もり、笑い声。誰かが用意してくれた食べ物の匂い。いまはどこを見回しても見当たらない。
こんなことになってしまったのは明確な理由がある。先日、大好きだったシェアハウスを退去したのだ。私ではなく、タイの俳優9人が。
……と、途中まで書いて3週間ほどが経ってしまった。さすがにいまは彼らの共同生活が恋しくて涙を流すことはないけれど、ふとした瞬間に思い出しては、楽しかったなぁとニコニコしている。
これは、タイ語もわからない日本在住の私が、異国の地で活躍する俳優たちの共同生活を壁となって見守った7日間のお話。
SAFE HOUSE DAY0
ほんの数ヶ月前、友人の勧めで視聴した2getherをきっかけに、タイドラマの沼へずぶずぶとはまった。しばらくすると、なにやら中の人たちがすごいらしいと耳にしたので、俳優のSNSもチェックするようになった。実際にすごかった。ちょっとスワイプするだけで新鮮な自撮り写真や俳優同士の交流が秒単位で更新される、手厚い世界がそこにはあった。Twitter、Instagram、Facebook、TikTok。主要のSNSはすべて彼らの罠が仕掛けられている。視聴作品に出演している俳優のアカウントから始まり、所属事務所、俳優が飼っているペット(俳優が飼っているペット……?)、番組公式、関係者、タイアップ企業……とどんどこフォローするうちに、気づけばフォロー欄の9割がタイの俳優やタイの企業になっていた。
そんな複数のSNSを行ったり来たりしていたある日のこと。
GMMTV公式「8人の男の子の共同生活を7日間配信するよ!」
この時はまだ趣旨を理解しておらず「へ〜よくわからんけど大掛かりなのはじまんな〜シェアハウスの配信とかオタクの幻想?」くらいのテンションで受け流していた。
しかし後日、1日9時間(蓋を開けてみたらゲリラ配信含む10時間近い配信だった)を一週間生配信!という正気の沙汰とは思えない恐ろしい情報が入ってくる。
プール付きの一軒家で、GMM所属の俳優8人がガチの共同生活。視聴者は8人のお目覚めから就寝まで視聴できる。ミッションに挑戦して優勝した出演者は自分の欲しいものがもらえるらしい。
いや、9時間て長いな??????????????
出演者とスタッフとオタクの精神と体力を不安に思いながら、この時点では正直「まぁ、あとから飛ばしながら見ればいっか〜」と思っていた。昼間は仕事があるし、夜の配信が終わる頃には夜中の2時になってしまう。なによりタイ語がわからないので字幕なしで楽しめるか不安だった。
あっという間に迎えた初日。見事ワクチンの副反応が重なり、熱のせいで強めにバンナーの幻覚を見ているのかと思ったら自然体のあすみく(EarthMix)だった。これは1秒たりとも見逃せない……と途方に暮れる。体調が復活してからは、通勤しながら前夜の配信の見ていないところを見て、休憩時間に朝の配信を見て、家路につきながら昼の配信を見て、帰宅してから寝るまで夜の配信をリアタイ視聴する限界生活。この1週間、SAFE HOUSE以外の記憶がまったく無い。
そんなかんじで結果的に全編見ることになったのだが、それにはやっぱり出演者たちの魅力とタイ語がわからなくても楽しめる企画、親切なファンの方々による翻訳の投稿が大きかった。盛り上がる出演者たちを見ているだけでも十分に楽しいのに、翻訳を見て「実際はこんなこと言ってたのか!」と二度楽しむことができる。各位には本当に足を向けて寝られない。
SAFE HOUSEの住人
ぞろぞろぞろ……
「「「「「「「「サワディーkrab〜〜〜!」」」」」」」
※DAY1の冒頭より
ここで僭越ながらSAFE HOUSEの愉快な住人たちを紹介したい。年齢は配信当時のもの。
Gun(Atthaphan Phunsawat)
※お仕事のためDAY3の夜まで参加
・1993年10月4日(27歳)
・(DAY1〜3の中では)最年長で芸歴も長いが、その愛らしいルックスとキャラクターから年下からもN'Gunと呼ばれている
・長年愛用のブランケットを持っていくか持っていかないか悩んだ末、持参した
・SAFE HOUSE退去翌日の早い時間からお仕事する姿がSNSに投稿され、オタクは恋しい気持ちを募らせると同時にOffGunの再会に心を踊らせた
Earth(Pirapat Watthanasetsiri)
・1994年2月23日(27歳)
・EarthMixのEarthの方。バンナーの自宅によくMixがいる
・食後の片付けやベットメイキングを率先して行いHOUSEの景観を守るも、苦手な皿洗いでは皿を割ってしまう
・DAY3に披露した腰振りダンスが定番になり、以降SAFE HOUSE以外でもダンスを要求されるようになった
Mix(Sahaphap Wongratch)
・1998年7月22日(23歳)
・EarthMixのMixの方。バンナーのEarthの自宅によくいる
・Fish Upon The Sky組。夜の団らんタイムではNongたちに甘える姿が度々目撃された愛されP'
・しばらく会えない愛猫の毛玉を持参し、フワフワしたりスンスンしたりした
Luke(Luke Ishikawa Plowden)
・1995年9月13日(26歳)
・初日に誕生日を迎えたラッキーボーイ(DAY1でバースデーサプライズが実行された)
・3年ほど前にタイへ。SHではタイ語のジョークを学んだり、逆に英会話教室を開いたりした
・共演者にかける甘い言葉で共演者と視聴者を照れさせてしまう
Pond(Naravit Lertratkosum)
・2001年2月1日(20歳)
・PondPhuwinのPondの方。勉強をがんばるPhuwinに差し入れのサンドイッチを作った
・Fish Upon The Sky組。FUTSのMork、SAFE HOUSEの眼鏡×ちょんまげ姿・DAY7の忍者はすべて同一人物
・何度か食事の準備を手伝おうとするも、絶対にコントになってしまう
Phuwin(Phuwin Tangsakyuen)
・2003年7月5日(18歳)
・PondPhuwinのPhuwinの方。オムレツをねだるPondにオムレツを作った
・Fish Upon The Sky組。P'たちが騒ぐなか黙々とオンライン授業や勉強に励むチュラ大生
・料理から掃除、Pondのお世話までそつなくこなす最年少
Khaotung(Thanawat Ratanakitpaisan)
・1998年10月13日(22歳)
・Mixと同郷で同い年。Mixの何気ない呟きに反応し、自分の食事をあとにしてカニカマ揚げを作ってあげる心優しき青年
・後半戦では出演者に煽られて突然奇行に走るが、いきさつのわからないインターファンがざわつく
・SAFE HOUSEで総合優勝し、後日ARM SHAREで賞品のギターを選ぶ様子が配信された
Neo(Trai Nimtawat)
・2001年1月14日(20歳)
・Fish Upon The Sky組。FUTSで演じたDueanがそのまま飛び出してきたような賑やかな人
・ハイテンションながら周りへの気遣いも欠かさないムードメーカー。SAFE HOUSEをSAFE HOUSEたらしめたMVP
・ある朝起床したらなぜかLukeのパーカーを着ていたことが一部で話題となった
Tay(Tawan Vihokratana)
※Gunと入れ替わりでDAY4の朝から参加
・1991年7月20日(30歳)
・大量の荷物と共に両手ノック(爆音)で登場した笑いの神様
・どんな家事でも全力で取り組み、入居初日に皿を割ったりアクロバティックなソムタム作りを披露した
・SAFE HOUSE参加中に腰痛が悪化。同じベッドのKhaotungに湿布を貼ってもらっていた
濃い。
SAFE HOUSEの環境
9人が住むのは前述通りプール付きの一軒家。
1階にはダイニング(SUPER COFFEEの忖度)、リビング(Lactasoyの忖度)、キッチン(カニカマなどが常備されている)、バーカウンター(SUPER COFFEEの忖度)、プレイルーム(Snack Jackの忖度)、外にプール(DEO KLEARの忖度)があり、2階には寝室が2部屋、ウォークインクローゼット、ファントーク用の部屋(SEAMENOWの忖度)、バスルームなどを完備。その他にもヤードムやダイソン、Canonのプリンターなどの忖度アイテムが登場し、ゲームを盛り上げてくれた。
部屋分けは初日の福笑いゲームで勝ったチームが2部屋から好きな方の部屋を選んで7日間入れ替えなし。うまいこと既存のペアが一緒の部屋・一緒のベッドになる。
SAFE HOUSEの1日
SAFE HOUSEの朝は早く、夜は遅い。
朝(8:00〜9:00):起床、ゲーム、朝食
昼(12:00〜14:00):ゲーム、昼食
夜(18:00〜24:00):ゲーム、夕食、ゲーム、2チームに分かれてファントーク
※括弧内はタイ時間
上記以外にも1日に数回ゲリラ配信が行われ、食事風景やプールで遊ぶ様子などが配信された。
・朝の配信は8人の起床から。Lukeはほぼ毎日配信開始時にはすでに起床して、プールサイドでシャドーボクシング、ソファーで読書などの朝活をしていた。見習いたい。一方まだ夢の中の俳優たちはNongに凸られたり鶏のおもちゃのけたたましい音で起こされたりと、起きるのが遅いほど雑に起こされた。Earthに関してはMixによる優しい頭ぽんぽんで起こされる日があり「バンナー……」と真顔にならざるを得なかった。
・ゲームや食事の時間以外は各々好きな場所で好きなように過ごす。ソファーでテレビを見たり、突発的に寸劇したりとどこかしらで何かしらが起きているため、まばたきもろくにできない。
・出演者は基本用意されたケータリングを食べるが、時々料理イベントが発生したり、最後の晩餐にはシェフが登場して超豪華ディナーが振る舞われた。食事の支度や食器洗いは自分たちで行うため、率先して動く人や何をしたらいいかわからなくなった結果とりあえずパンをかじってみる人など三者三様で味わい深い。あとは出演者皆頻繁にカニカマを食べる。おそらく日本でもSAFE HOUSE配信中のカニカマの売り上げが3割くらい増えたと思う。
・ゲームのバリエーションがすごい。配信のたびにゲームをやるのでそれなりの数のゲームが用意されていたが、シンプルながら盛り上がるゲームばかりだった。個人的にツボだったのは、前述したDAY2夜のスパイゲーム、DAY3夜の相撲、DAY4・DAY6夜のあっち向いてホイ。出演者の個性が出ていたし、動きがあると言葉がわからなくても楽しめるのでありがたい。
突然の仮装パーティー
5日も6日も彼らの生活を見守っていると、まるで自分も同じ屋根の下で過ごしているような気分になってくる。終盤はSAFE HOUSEが終わるのがつらすぎて情緒がおかしなことになり、出演者みんなが紙飛行機を飛ばす映像を見ただけで「エモ……」と呟きながら泣き出す始末。そんな気持ちを救ってくれたのが最終日の仮装パーティーだった。
夜。いつもより忖度タイムが長いな〜と思っていたら、突然階段からびっくりするくらい顔の良いオオカミが登場。
!?
脳の処理が追いつかないまま仮装ランウェイは続き、忍者のPond、しゃぶしゃぶ肉のPhuwin、おにぎりのKhaotung、ガイヤーン(焼き鳥)のMix、サボテンのTay、うさぎのLuke、ワニに乗ったNeo(タイの民話クライトーンとのこと)が大集合。
しゃ……しゃぶしゃぶ肉!(頭を抱える人の絵文字)
特に優勝を決めるとかでもなく、単純に視聴者を楽しませるためにかっこいい俳優さんたちが仮装してくれることが可笑しくて愛おしくて笑ってしまった。しゃぶしゃぶ肉とかサボテンとかどこからそんな発想が出てくるんですか? GMMは責任とってアクスタ出してください。
このあとの超豪華ディナーでは気球に乗ったパイロットあたぱんさんの等身大パネルが登場(動画左奥)
謎にTayと同じ籠。
さよなら、SAFE HOUSE
楽しい時間はあっという間。閉会式ではそれぞれを讃える表彰があって、お互い書き合った寄せ書きを読み上げて、Neoくんの即興ラップ(ジャニーズでいうところの紹介ラップ、歌詞が天才)、全員のセッションで幕を閉じた。常に笑い声が起きていて、彼ららしくてあたたかい終わり方だった。
7日間、視聴者としては本当に楽しかったから、彼らにとっても楽しい時間で、SAFE HOUSEを離れることを寂しく感じてくれていたら……と願ってしまう。リアリティーショーとはいえ彼らは人間だから、視聴者を楽しませる代償にしんどい思いをしてはいないだろうか、と視聴中もずっと気がかりだった。だから後日、SAFE HOUSEが終わったその足でバンナーのEarth邸にMix、Neo、Phuwinが泊まって打ち上げをしたと聞いて、あれだけ一緒にいたのに!?と驚いたのと同時に、ほっと胸をなでおろすような気持ちだった。
タイ特有なのか、はたまた出演者たちが特別穏やかな人の集まりだったのかはわからないけれど、年上だから・年下だからといった押し付けがなくて、できる人ができることをやって、年下でも容赦なくいたずらを仕掛けにいける関係性がいいなぁ、と思う。あすみく目当ての軽い気持ちで視聴したのに、いつの間にか出演者みんなの個性が愛おしくなっていた。SAFE HOUSE終了直後からFish Upon The Sky、Dark Blue Kiss……とむさぼるように履修して、記憶の中の彼らとのギャップにめまいを起こしたのはいうまでもない。
出演者、スタッフの方々、彼らのファンのみなさんも本当にお疲れさまでした。また変わらない空気感で、シーズン2も楽しみにしています。
カチッ!